徒然日記

11月16日 その2277『逢坂誠二の徒然日記』





5日間に及ぶドイツでの活動を終えて、

今朝、ベルリン・テーゲル空港から

ウィーンを経由して、成田に向かう。



いよいよ帰国だ。



この5日間、

今までとは違った多くのことを体験し、

多くの知見を得ることができた。



本当に有り難く思う。



最終日の昨日も、フル回転をした。







1)エネルギーシフト懇談会

昨日は朝一番で、

エネルギーシフト懇談会の

ライナー・パーケ代表から説明を受け、

その後、懇談をした。



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ドイツは、2002年に、

いったん20年後の原発ゼロを決めた。



ライナー・パーケ代表は、

その当時の連邦政府環境省の事務次官だ。



冒頭、ドイツの原発に関する流れについて

簡単な説明があった。



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1970年代:オイルショックで原発増加



1986年4月26日:

チェルノブイリ事故で原発に対する国民意識が劇的に変化



1998年:

社会民主党(SPD:赤)と緑の党(緑)が政権獲得

(いわゆる赤緑政権)



脱原発と再生可能性エネルギーを政策掲げる

(この頃、パーケ氏は事務次官を務める)



2000年:

電力事業者と脱原発の交渉の結果、

今後22年のうちに補償なく原発を廃止することを合意



2022年:

2022年に原発をゼロにする法律施行



化石燃料が原発にとってかわることのないよう

再生可能エネルギーも促進



ECの二酸化炭素排出権取引など重要な政策もできた



当時は原発ゼロに対する反対意見も多かったが、

その後の政権も原発ゼロを踏襲。



2010年12月:

「2022年原発ゼロを見直し」、

原発使用期限を延期する決定が行われる。



これは議会で保守派が過半数を占めたことによるものだが、

国民意見との相違があった。



2011年3月:フクシマ事故



ドイツで、脱原発の国民世論が急速に高まる。



メルケル首相が、

倫理と技術の二つの委員会を設置し、

原発について議論。



その結果、

2011年夏(フクシマ事故から3カ月後)に、

2000年の脱原発基本方針に戻る。



つまり「2022年の原発ゼロ」

を改めて決定する。



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ドイツのエネルギーシフトは、

急に決まったものではなく、

長い議論と取り組みがあったから。



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達成すべき政策課題は何か?



買取価格の設定は、

全てのエネルギーを同じスタートに立たせる必要がある。



風力、太陽光、地熱、水力など、

それら設備に投資した人は、

20年間に渡り収益を得る。(FIT)



4年毎に価格を引き下げるかどうかの報告を政府は負う。



その結果、太陽光と風力が優勢となった。



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ドイツでは、

地熱は、マージナルな領域でしか使われない



水力もあまり増えない



バイオマスは、成長はしたが限界に突き当たった

ドイツは人口密度が高い。

バイオマス発電の増加は自然保護、食料問題になる



今後は、風力と太陽光発電によるべき(他の選択肢はない)。



ドイツの風は、

必ずしも恵まれているわけではないが十分にある



太陽光も同様。



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今後の課題。



1:

再生可能エネルギーは、

需要や市況に応じて左右するのではなく天候による





2:

変動幅が大きい



太陽光発電の設備容量:33ギガワット



天気の良い日は、ゼロから一気に25ギガワットまで増える



風力も同様。



3:

運転費用が実質ゼロ(限界コストがゼロ)



初期投資は多額だが、即、20〜30年分が賄える。



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ドイツでのエネルギーシフトは、

新たな段階に入った。



再生可能エネルギーの増加は、

25%程度までは、技術的には割と容易

(もちろん政治的には大変な作業だ。)



逆に現在は、政治的コンセンサスはあるが、

電力全体の仕組みを変化させねばならない。



その意味で、新たな段階に入っている。



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課題1



シンクロナイゼーション



変動する発電を顧客のニーズに合わせる



答えは、フレキシビリティ。



余剰に対応する発電所をフレキシブルにする必要がある



今後は、

稼働6〜7時間/日のような従来型発電所は不要であり、

需要に合わせるとともに変動に合わせる必要がある。



課題2:

需要サイドの問題:需要を発電に合わせる



課題3:

送電網の整備



ドイツ中の発電網がつながれば、

つながるほど変動に対応しやすくなる



課題4:

コストの問題



これまでは学習が必要だったので、

再生可能エネルギーに費用をかけた(200億ユーロ)



その中で、風力、太陽光発電所、

新しいガスなどでコストを下げることに成功



将来的に、6〜9セントで風力発電可能。

太陽光は 9セント以下。



これは石炭やガス発電と同価格であり、

新たな原子力発電所のコストよりも安い



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例えば、イギリスの新発電所契約のコストは、

ドイツの風力、太陽光発電コストの1.5倍



エネルギーシフトを

経済的な面でも成功させることができる。



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コストは、

技術的・経済的問題ではなく、

政治的問題だ。



エネルギーシフトは、

コスト面で二つのミスを犯す可能性がある。



1:

従来の電力システムをできるだけ長く維持しつつ、

再生可能エネルギーを導入する



つまり再生可能エネルギーを蓄電だけに頼るのコスト的にダメ





2:

奨励をこのまま続ける



バイオマスは風力の4倍コスト



コスト面で都合の良い、太陽光、風力を推進する。



他のエネルギーは、補助電力。



そのためにはスマートな取引市場が必要。



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市場は多くの人に開かれる必要。



これまでのエネルギーシフトでは、発電施設所有者を変えた



キャパシティの50%は個人の手にある。



数百万人のドイツ人は、消費者でもあり発電者。



エネシフが支持される理由の一つ。



スマートな政治とともにこの問題が解決できる。



エネルギーシフトを実現するためアゴラが生まれた。



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市場原理をどう入れるか。



競争条件のもとで発電所はできていない。



国家の独占などでできている。



このようなシステムのもとでは、

発電所のりファイナンスは、難しくない



90年代、電力が自由化された



適切なマーケットシステムはどうあるべきか



電力取引所は、アメリカの制度を参考に取り入れた



限界コスト市場。



取引所においては、

投資コストではなくて運転コストで判断。



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とこのあたりまで説明を聞くにつれ、

パーケ氏の説明が、

徐々に高度になってくる。



そこで我々も椅子から立ちがって、

ホワイトボードの前に立ち、

ああでもないこうでもないと議論をさせて頂いた。

(まるで大学の講義のような雰囲気だ。)



その結果、

パーケー氏の言わんとするところは、

少しは理解できたが、時間切れとなった。



そこで英文の説明資料を頂いて、

今後はメール等を介して、

さらに勉強をすることにした。



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白熱した、実に実りの多い

エネルギーシフト懇談会での議論だった。







2)気候変動対策を推進する経営者財団

エネルギーシフトの懇談会を後にした後、

休憩もなしに、

「気候変動対策を推進する経営者財団」を訪問し、

ソフィー・ハイツ欧州気候政策担当と懇談した。



== 以下、ソフィー氏の発言 ==



企業により立ち上げられた財団。



各企業CEOの意思による。



気候を守ることを目的とした企業の集まり。



温暖化2度以内を目標とする。



ドイツの大企業10社などがサポート。



エネルギー供給、貿易、テレコム、交通、セメント。

(まだ自動車製造、鉄鋼は加わっていない)



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EnBWもその企業の一つ



OTTOグループは、大手流通企業で、

サプライチェーンでどのような変化が、

2020年までに必要かを検討している。



プーマは、2010年〜2015年に、

ゴミ、水、二酸化炭素などを25%下げる。



DBは、

グリーンバーンカード(価格は高い)を発行。

二酸化炭素の抑制を目的とする。

再生可能エネルギーを促進する。

ドイツ一の電力消費会社。



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インフラ、供給システムの全ての変革が必要。

我々の役割は、政治の後押し。



この事務所で、

政治家、NGO、企業人が集まり、料理をしながら話し合う。



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ドイツ企業は、

気候変動が大きな課題だと考えている。



しかし結果的に、エネルギーシフトが重要になる。



環境に優しいソリューションが生まれる。



例えば、N&W(ドイツ中小企業)の例など。



ここは、

世界のソーラープラント建設の80%を手掛ける。



温暖化対策で確かに企業のイメージアップにつながる。



しかし温暖化対策にはコストがかかる。



商品価格が上がることは嫌う傾向が一般的。



しかし価格が上がらないことを示す会社もある。



シュコ(窓枠会社)は、

全てをエコ電力にして、

最終的に電力料金は1%しか上がらなかった。



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単に政策をつくるだけではだめ。



企業にもメリットのあることをしなければ、ワークしない。



== 以上、ソフィー氏発言終了 ==



関係者が料理をしながら話し合う

というアイディアに心が引かれた。



ソフィー氏の説明によれば、

少しの時間、一緒に作業をしたのち、

飲食をすることに相当の意義があるという。



まったく同感だ。



DBのような大手企業から中小企業までが同じ土俵で

こうした活動に参加していることに、

ドイツの層の厚さ、懐の深さを感じた。







3)コンラート・アデナウアー財団

気候変動対策を推進する経営者財団との懇談を終えて、

さらに間髪を入れずに、アデナウワー財団との、

昼食を取りながらの懇談に移った。



対応頂いたいは、

クリスティアン・ヒューブナー環境気候エネルギー政策コーディネーターと

ラベア・フェルストマン アジア太平洋地域担当のお二人だ。



アデナウワー財団は、

原発を推進した保守党CDUに近いシンクタンクだ。



== 以下、財団側の発言 ==



2010年に原発使用期限を延長したのは、

電力供給の安定性を確保しつつ、

エネルギーシフトを進めるため。



しかしフクシマ事故で、

原発に対する懸念が一気に高まり、

2022年原発ゼロを決めた。



未だにCDUなどには、

脱原発は間違いとの声もあるが、

少なくともエネルギーシフトは正しい。



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CDUは、

正直に原発利用延長を主張し、

選挙に勝っていた。



だから2010年に使用期限を延長した。



ところがフクシマ事故後のBW州選挙で、

50年間守った与党の座から転落。



2022年原発ゼロの判断は、

メルケル首相の押し付けではなく、

キチンと議論し、世論の動向も受けての判断。



このドイツの判断に関し、

他国がどう見ているかを財団でも調査した結果、

支持する声が多い。



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今後の課題は、

再生エネルギー価格に市場性を導入し価格を抑えること。



送電網の整備を行うこと。

そのために連邦ネット庁の権限を増やす法改正を実施。



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未だに原発ゼロに不満の声もあるのは事実。



議員の中にも、

原発ゼロは間違いと言っている人はいるが、

今は、その論争はない。



エネルギーシフトによって、

有利になる企業、不利になる企業があるが、

これまでにもエネシフに対応する時間はあった。



それをやらずに不利になるのは、自業自得。



電力事業者が、

従来型発電では経営できず、

人員削減を行わざるを得ないと、

SPDやCDUに圧力をかけているのも事実。



== 以上、財団発言終了。==



アデナウワー財団は、

原発を推進してきた保守党CDU系のシンクタンクであり、

どのような発言をするのか、極めて注視した昼食会だった。



紹介したように、

未だに原発ゼロは間違いと主張する方もいるようだが、

昨日の話を聞く限り、極めて冷静な印象を受けた。



最後に、私から、



「今後、原発ゼロは覆るか?」



と質問をした。



「不可能! 不可能!」



ラベア・フェルトマン氏が強く否定をした。



国民世論は脱原発であり、

原発ゼロを覆すのは、政治的に困難と言い切った。



保守系シンクタンクの方が、

ここまで強く発言するのを聞いて、

安堵の気持ちで昼食会を終了した。



時計を見ると14時30分を過ぎ、

15時に近くなっていた。







昨夜は、10月末まで東京にいた、

フォルカー・シュタンツェル前駐日ドイツ大使が、

我々を夕食に誘って下さった。



会場は、

1621年から営業している伝統的ドイツレストラン。



もちろん食事を楽しんだが、

そこでも話題の中心はフクシマと脱原発。



結局は、22時過ぎまで、激しくも心地よい議論をして、

その昔、死刑囚が最後に食事をする場所だったというレストランを後にした。



以上で、今回のドイツ日程の全てを終えた。



私を招聘下さったドイツ政府、ドイツ連邦議会、

全ての関係者の皆さんに、心から感謝したい。



私の人生に、かけがえのない大きな宝箱を頂いた感じがする。



今後、この宝箱を開け、みんなで共有し、

中の宝に磨きをかけて、

光り輝くものへと進化させたい。







今日は朝から移動開始だ。



ベルリンテーゲル空港を離陸し、

ウィーン経由で、成田に向かう。



明日の午前には、日本に到着するだろう。



とにかく感謝、感謝のドイツ滞在だった。



さあ今日も、しっかりと前進します。

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     2013・11・16 Seiji Ohsaka

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