徒然日記
2月13日 その1300『逢坂誠二の徒然日記』
昨夜、本年9箇所目となる新春の集いが長万部で開催され、
今朝からの活動に備えて、夜遅く帰函しています。
今朝の函館は、穏やかですが雲の多い朝になっています。気温は零度程度でしょ
うか。随分と寒さが緩んだ印象があります。
1)TPP
TPP議論が活性化して半年近くになります。
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さらに日豪EPA交渉の模様が報道で伝えられています。
それによれば、コメが除外品目になるようです。しかし乳製品は、その扱いが不
透明です。一体どうなるのか、この先行きが見えなければ、簡単に交渉妥結はで
きません。安易な妥協は、北海道にとって死活問題です。特に北海道選出議員と
この点について、十分な協議を経なければ、進めることはなりません。
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さて改めてTPPについて、色々と思いを巡らせています。
【TPPの対象は何か?】
現在、TPPにより工業製品や農産物の関税が撤廃されることが大きくクローズ
アップされています。一般論として、工業製品の関税撤廃は日本にプラス、農産
物の関税撤廃は日本にマイナスに働くと言われてます。しかしTPPはこの二分野
にとどまるものではありません。
実際には、以下のような分野等が議論の対象になっているのです。
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工業製品、農産物、繊維・衣料品の関税撤廃
金融、電子取引、電気通信などのサービス
公共事業や物品などの政府調達方法
技術の特許、商標などの知的財産権
投資のルール
衛生・検疫
労働規制や環境規制の調和
貿易の技術的障害の解決
貿易紛争の解決
その他まだあるはずです。
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つまりTPPは、工業製品と農産物だけの問題ではなく多方面に及ぶことなので
す。このことを、多くの国民が理解、共有していることが重要です。
【TPPによって日本はどんな国になるのか?】
貿易のルールだけではなく、社会のサービスのあり方、規制のあり方などが変わ
る可能性があります。これらについて、加盟各国間で、ある一定の方向に標準化
されるのがTPPだと理解できます。この標準化は、今の日本で行われている方式
で標準化されるとは限りません。
例えば労働分野です。
現在、日本とアメリカの労働規制は、違っているはずです。これが基本的に同じ
ような方向になっていくことが予想されます。どんな方向に、いつから変化する
かは、今後の交渉次第ですが、今と同じ労働規制が採用される保証はありませ
ん。労働規制だけではなく、保険のあり方など、生活の多方面に及ぶ分野が変化
する可能性があるのです。もちろんこの変化は、悪いことではなく、良い変化か
もしれません。
TPPは、単なる貿易の問題ではなく、社会の変化をもたらす問題であることを、
多くの国民が共有しているかどうかが、大変重要なポイントになります。
【日本の食料の確保は大丈夫か?】
1960年頃、日本の食料自給率は80%程度でした。今は、その半分の40%
程度です。
各国の2007年の食料自給率は次のとおりです。
アメリカ:124%
フランス:111%
カナダ:168%
オーストラリア:173%
ドイツ:80%
イギリス:65%
先進諸国の多くが、日本の自給率を上回っています。日本同様に低食料自給率に
悩んでいたスイスも、最近は68%程度に上昇させたとの情報もあるようです。
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現在の世界の人口は、69億人程度です。一年に6千万人が死亡し、1億4千万
人が生まれているといわれます。つまり現在、一年に人口が8千万人が増加して
います。30年後の2040年頃には、90億人を超えるとの推計もあります。
あと40年もたたないうちに、世界の人口は今よりも30億人も増加し、100
億人を超えるのです。
現在、世界の食料は、世界の人口を養うに十分な量があります。
一方、現在世界には、8億人をこえる栄養不足状態の方がいます。これは、食料
が偏在化していることなどが理由と言われていますが、多様な要素が絡み合って
います。
食料があるのに飢餓があり、今後、さらに世界の人口が増える中で、日本の食料
自給率が40%で良いとは思われません。何としても自給率を上げることが重要
です。食料安全保障の面から必須であると当時に、少しかもしれませんが飢餓に
もプラスに働きます。世界食糧市場の形成は、その市場に参入する経済力のな
い、食糧輸入国を排除することになります。したがってマクロ的には世界食糧市
場の縮小が飢餓にプラスに働く可能性があります。
食料の自由貿易化は、食料自給率の向上に貢献するとは思われません。この点
を、どう捉えるかが非常に重要です。
【保険や社会保障はどうなるのか?】
現在、日本に住む方は、ある一定のルールに従っていれば、ほぼすべての方々
が、ある一定程度以上の医療保険のサービスを受けることができます。医療保険
ほど満たされていませんが、皆年金制度もあります。
こうした国民健康保険などの公的社会保障である医療保険制度は、民間の医療保
険制度に加入し、公的給付を受けなくとも何とかなった時代が随分続いていま
す。
しかし最近は、民間の医療保険が随分と大きな伸びをみせ、公的保険給付に加え
て、民間による上乗せ給付を受ける方々が増えています。裏返せば、公的社会保
障制度の力が弱まり、自助努力による民間保険で補う割合が増えているのです。
老後の年金については、医療保険以上にこの傾向が顕著なはずです。
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極めて大雑把な議論ですが、TPPによって、保険分野もさらに自由化されると、
互助による公的社会保障の割合が低下し、自助による民間分野による保障の割合
が高まる可能性があります。アメリカなどは、こうした傾向の強い国と言われて
います。
私たちは、こうした国を選ぶのかどうか、今回のTPPの議論では、こうした判断
もあるのです。
少し乱暴に言えば、多くの国民が等しく保障を受けられる公的互助の割合を減ら
す社会を選択するのかどうかの判断が求められています。
【労働環境はどう変化するか?】
韓国がFTAを積極的に進めています。韓国経済界の方がこれに関し、「これで我
々企業は、海外に出なくても良くなった。」などの発言をしているようです。
この言葉の意味は何でしょうか。
安い労働力が海外から、逆に国内に入ることを意味しているのだと思います。
確かに安い労働力は、企業経営者にとって魅力でしょうが、その際に、私たちの
社会がどんな雰囲気になるのかを十分に考えた上で選択する必要があると思われ
ます。
【医師、弁護士、薬剤師など専門職はどう変化するか?】
こうした専門性の高い分野の流動性が高まる可能性があります。
【各国間には優位点と劣位点があるが】
世界の国の間では、相対的な優位点と劣位点があるのが当たり前です。
たとえばアメリカの農業は、公的資金を相当につぎ込んで生産性をあげたと指摘
されており、アメリカにとっての優位点です。逆に日本の農業は、耕地面積が狭
いことなどもあり、対外的には劣位点と言えます。これらを同じ条件下で競争さ
せると、劣位分野が衰退するとのではないかと容易に推測できます。
各国間の多くの垣根を取り払って、ヒト・モノ・カネがスムーズに行き来できる
のは、理想の社会のように思われますが、それはそれぞれの分野の置かれている
条件が同一の場合です。条件が違う場合は、一定程度の補正がなければ、どちら
かに駆逐される可能性は否定できません。
こうしたことも含めてTPPを考える必要があります。
【日本の発展のために国を開くことは必要だが激変は劇薬】
TPPには、色々な懸念事項があります。しかし、日本が世界の中で孤立して良い
わけではありません。日本の発展のために国を開いていくという考え方は重要で
す。
しかし、多くの分野で一気に自由度を高めると、日本社会に悪影響が起こりかね
ません。
本来こうした案件は、以前から、徐々に議論をし、様々な状態を想定しつつ、粘
り強い交渉の末に、少しずつ実現して行く性質のものです。
今回のTPP議論は慌てると取り返しのつかないことになり兼ねません。逆に急が
ないと国益が削がれるとの声もあるようですが、現時点での議論はメリットだけ
が強調され過ぎ、デメリットは一次産業だけと見られています。でも、どの分野
にデメリットが及ぶのか、社会がどう変化するのかの議論、検証が、国会でも、
学会でも、各界でも、あるいは地域でも少なすぎます。
この20年余り、議論されることの少なかった、今後の日本国のあり方の検討を
早急に開始する中で、慎重に検討していく課題だと私は考えています。
【一次産業の本質的強化は必須】
一次産業の足腰を本質的に強化するための対策は必須です。現在、日本の農家経
営者の平均年齢は66歳程度であり、多くの場合、後継者がおりません。日本の
一次産業は、このまま放置しておくと衰退するのです。TPP議論があろうがなか
ろうが、どう一次産業を立て直すかの対策は必須です。
もちろん留意点があります。1993年のガット・ウルグアイラウンド交渉後の
対策費6兆1千億円のようなことをしてはいけません。結局、あれは農業の体質
強化には、何もつながらなかったと多くの場面で批判されているのです。
2)長万部
昨夜の長万部での集い、多くの方にご参加頂きました。厳しい逆風が吹く中です
が、本当に有り難く、心からお礼申し上げます。
我々の政権が行っていることを話し、なぜ今、政権運営が苦しいのかを説明させ
て頂きました。またこれまで出来なかったことや、新たに着手したことなどにも
言及しました。
ご参加頂いた皆さんには、一定程度の理解が得られたのではないかと感じていま
す。
とにかく丁寧な説明が求められています。頑張らなければなりません。
今日も朝から、函館市内で活動します。
午後には、今年10箇所目となる新春の集いを函館で開催します。今日も多くの
皆さんに、お世話になります。
さあ今日も、しっかりと前進します。
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2011・2・13 Seiji
Ohsaka
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