徒然日記
11月13日 その2274『逢坂誠二の徒然日記』
ドイツ3日目の朝を迎えた。
昨夜遅く、シュトゥットガルトからヴァルデンブーフ氏を経由して、
黒い森(シュバルツバルト)のティティゼ―ノイシュタットに到着した。
ティティゼ―ノイシュタットは、
山間の湖に面した風光明媚な観光地だ。
先月の訪問時は、峠の山道から、
湖の向こうに広がるティティゼ―ノイシュタットを
眺めつつウルムに向かった。
その美しさに言葉を失った我々だが、
まさか今回、ここに来られるとは思わなかった。
夜遅い到着、さらに今朝は早い出発と、
滞在時間が12時間もない。
しかも暗い時刻の滞在だ。
せっかくの来訪だが、
美しい景色を見られず何とも残念だ。
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連日、エネルギーについて、
密度濃い議論、視察、面談を行っている。
そのため、やるべきこと、考えべきことがあり、
早朝から目が覚める。(もちろん時差もあるのだろが。)
帰国したら、とにかく多くのことを
しなければならない。
1)資源効率・循環経済会議
昨日は、午前9時30分から
「資源効率・循環経済に関する
バーデン=ヴェルテンベルグ会議」の
オープニングセッションに参加した。
800人以上が参加している。
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オープニングセッションを見て、
会議の強烈な戦略性を感じた。
冒頭に、
バーデン=ヴェルテンベルグ州の
フランツ・ウンターシュテラー環境大臣が
環境に関するメッセージを発する。
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BW州は、森林や石はあるが、資源が少ない。
資源の効率化は、重要。
単にゴミを減らす、
資源消費を減らすだけではなく、
技術革新のチャンス。
製造業はGDPの25%(EU)、でもBW州は33%。
イノベーション、技術開発が大切。
資源効率の向上。循環経済、再生効率の高い経済。
これまでのシステムを見直す、廃棄物経済から循環経済。
指標や基準を打ち立てることが重要。
資源効率化を目指す100企業程度のアライアンスを形成する。
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大臣は、以上のような言葉を矢継ぎ早に発し、
環境に対する強いメッセージを発する。
ビクトル・ユーゴーの
「時期が到来したアイディアほど強いものはない」
との言葉を引用し、スピーチを締めくくる。
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その後、地元の商工会議所、製造業、
化学産業、電子産業などの代表者が、
壇上で、資源効率・循環経済に対する思いを発言する。
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持続可能性は、BW州企業の戦略に既になっている。
環境への配慮は、長期的な利益をもたらす。
資源が不足するならアイディアを出す。
効率の高い機械を作ること。
資源の節減を文書として残し、他の業界にも発信する。
州政府の提案を一緒にやって行きたい
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地元の商工産業界からこんな言葉が矢継ぎ早に飛び出して、
ステージ上でアライアンスの確認文書にサインする。
つまり大臣の発する方向に、
地元経済、産業界あげて取り組む姿勢が明確になる。
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その上で、
エリック・シュヴァイツァー ドイツ商工会議所会頭が登壇。
「経済界と政界との連携は重要。
しかし、どのように具体化するかが大切。
課題は、専門家不足、エネルギーシフト、資源の効率化だ。
特にエネルギーと資源の価格が景気リスクのトップ。
持続可能な経済は人々の頭の中から始まる。
中身を理解すること。教育が重要。
全ての職業教育の中で環境を取り扱う。
ドイツのリサイクル業は世界一。
産業は環境問題と手に手を取って進む。」
地元に続き、全国的見地からのメッセージが発せられる。
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次も秀逸だ。
ローマクラブの報告書執筆者でもある
ウゴ・バルディ フィレンツェ大学教授が、
鉱物資源の採掘によって、
最終的に様々なものの価格が高くなって、
コストが上がる。
どこかの時点で、
産業は成長することはできない。
地面を掘るのは、
自分たちの墓場を掘るようなもの。」
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との辛らつな指摘を行い、
持続可能性への取り組みを強く促す。
日本から参加した、
キャノングローバル環境企画センターの古田清人氏も、
各セクションに環境の横串を通すキャノンの取り組みを紹介する。
最後に、
ヤネス・ポトチェニック欧州委員会環境担当委員が
ドイツの環境への取り組みをEUとしても評価することなどを、
ビデオで伝える。
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長くなってしまったが、結論はこうだ。
・
州政府、大臣の資源効率・循環経済に対する明確な方針
・
その方針に賛同する地元の経済産業界
・
その行動を
全ドイツ的見地から、
さらに専門家の立場から、
そして日本からも補強する発言
・
最後、EU政府もその取り組みを支持する
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午前の2時間のセッションで、
資源効率・循環経済に対するBW州の今後の取り組みを、
実に巧みに演出をした。
なかなか締りのある会議への出席だった。
2)大臣のとの懇談
午前の会議終了後、
環境気候エネルギー事業省へ移動し、
フランツ・ウンターシュテラー環境大臣と
1時間以上に渡って懇談をした。
懇談の主なポイントは次の通りだ。
・
エネルギーシフトにともなうコストの問題
・
ドイツの脱原発と日本の相違点
・
2022年原子力ゼロを実現するための
さらに二つ、送電網と蓄電という課題
これらについて、予定時間をオーバーして、
大臣と密に懇談をした。
ドイツ語が話せたら、もっと深い議論ができただろう。
ドイツ語が話せないことを強く後悔した、
大臣との懇談だった。
(大臣は、実に巧みに受け応えをした。
議論の中身はいずれ紹介したい。)
3)リッター社
午後には、
ドイツで有名なリッターチョコの本社を訪問し、
エネルギー問題の視察を行った。
コジェネ等により、
年間100万ユーロ余の節約効果があること。
通常よりも10%程度までの価格高なら、
環境に配慮したものを使用する。
こんな説明があった。
実はリッター社は、
先月訪問したシェーナウの市民電力会社の
大口顧客とのことだ、
地元に根差し、
環境に配慮した会社経営方針を聞き、
清々しい思いで、リッター社を後にした。
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ティティゼ―ノイシュタットの朝の気温は氷点下。
外は薄っすらと白く、雪景色だ。
街灯に照らされたアスファルト面がキラキラ光っている。
たぶん路面が凍結しているのだろう。
早朝の移動に向け、
荷物をまとめ出発準備を開始する。
今日も、密度の濃い、
エネルギー三昧の一日だ。
さあ今日も、しっかりと前進します。
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2013・11・13 Seiji Ohsaka
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