徒然日記
選挙小屋 【26年9月26日 『逢坂誠二の徒然日記』8667回】
1)選挙小屋
10年ほど前になりますが、政治コミュニケーションを研究する駒澤大学の逢坂巌教授から、スウェーデンの「選挙小屋」という興味深い取り組みを教えて頂き、ずっと関心を寄せていました。
昨日、この選挙小屋のことが、毎日新聞に載っていました。
選挙小屋はスウェーデン語では「valstuga(ヴァールストゥーガ)」と呼ばれます。
選挙が近づくと、街の中心部や広場などに、各政党が小さな小屋やブースを設けます。そこには政党のスタッフや候補者、ボランティアなどがいて、市民は気軽に立ち寄って、政治について直接話をすることができます。
2026年の総選挙でも各地に選挙小屋が設置されました。スウェーデン公共ラジオも、選挙小屋を「今なお選挙運動の重要な一部」として紹介しています。
日本の街頭演説とは、少し雰囲気が違います。
候補者がマイクを握って、一方的に政策を訴えることが中心ではありません。
「教育についてどう考えているのか」
「物価高への対策はどうするのか」
「なぜ、この政策に賛成しているのか」
そんなことを、市民が直接質問できます。
政治家や政党の側も説明するだけではなく、市民の話を聞きます。
しかも、同じ広場に複数の政党の選挙小屋が並ぶことがあります。
ある政党で話を聞いたあと、隣の政党へ行って同じ問題について質問する。そうすれば、それぞれの考え方の違いも分かります。
まさに「政治を聞き比べる場所」です。
スウェーデン選挙管理当局によれば、選挙小屋そのものを選挙管理当局が運営しているわけではありません。公共の場所に設置する場合には警察の許可が必要で、自治体や政党同士で調整することもあります。
私は、この仕組みで特に大切なのは「小屋」そのものではないと思っています。
大切なのは、政治家が有権者に話すだけではなく、有権者が政治家に話せる場所をつくるという発想です。
日本の選挙運動は、街頭演説、選挙カー、ビラ、ポスター、SNSなど、どうしても候補者から有権者への一方向の発信になりがちです。
もちろん街頭演説にも意味があります。しかし、政治家が30分話すより、市民と5分ずつ何人も話した方が、お互いに分かることもあるでしょう。
日本でも「選挙小屋」のような取り組みができないものでしょうか。
もちろん、スウェーデンの制度をそのまま持ってくればよいという単純な話ではありません。
日本には公職選挙法による選挙運動の規制があります。また、小屋やブースを公共空間に設置するなら、道路や公園の使用、場所の公平な配分、費用負担など、整理しなければならない課題があります。
それでも、例えば自治体などが一定のルールのもとで場所を用意し、各党・各候補が公平に参加できる「対話の広場」をつくることは、検討に値すると思います。
小屋でなくても構いません。テントでも、テーブルでもよいでしょう。
大事なのは形ではありません。
「演説を聞きに来てください」ではなく、「あなたの話を聞かせてください」と政治の側から場所を開くことが大事だと思います。
SNSによって政治家が直接発信できる時代になりました。しかし、SNSが広がれば広がるほど、顔を合わせて話し、質問し、答え、また問い返すという時間の価値は、むしろ高まっているようにも感じます。
選挙とは、候補者が有権者にお願いするだけの期間ではありません。
社会の課題について、市民と政治家が直接話し合う機会でもあるはずです。
スウェーデンの「選挙小屋」は、民主主義とは投票日だけのものではなく、対話を積み重ねることでもあると教えてくれているように思います。実は私が、街頭おしゃべり会を実施している理由も、この対話にあります。
さあ今日も、ブレずに曲げずに、確実に前進します。
【26年9月26日 その6970『逢坂誠二の徒然日記』8667回】
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