徒然日記
学習指導要領の改訂 ― 学校現場に余裕を 【26年9月15日 『逢坂誠二の徒然日記』8656回】
1)学習指導要領の改訂 ― 学校現場に余裕を
学習指導要領の改訂に向けた議論が進んでいます。
学習指導要領とは、全国どこの学校でも一定水準の教育を受けられるよう、学校で何を、どのように学ぶのかについて国が定める教育課程の基準です。教科書や時間割も、これをもとに作られます。
おおむね10年に一度改訂されますが、単なる授業内容の見直しではありません。これからの社会を生きる子どもたちに、どのような力を身につけてもらうのか。国の教育に対する考え方を具体化するものでもあります。
現在、中央教育審議会で2030年度以降の新しい学習指導要領について議論が進められています。小学校は2030年度、中学校は31年度から全面実施、高校は32年度から順次実施される見通しです。情報教育については、28年度から段階的に先行実施する方針です。
今回の改訂には、いくつかの大きなポイントがあります。
一つは、AI時代を見据えた情報教育の大幅な拡充です。小学校では「情報の領域」を設け、中学校では新教科「情報・技術科」を創設します。生成AIの特性やリスク、偽・誤情報、情報の信頼性などについても学びます。
もう一つは、教育課程の柔軟化です。「調整授業時数制度」を導入し、学校の判断で対象となる教科の授業時数を最大15%程度減らし、その時間を他の教科や個別学習、教員研修などに活用できるようにすることが検討されています。また、不登校の子どもや特異な才能を持つ子どもなど、一人ひとりに応じた教育の充実も目指しています。
こうした方向性を評価する声も多いと思います。
しかし、私はここで、学校現場で今何が起きているのかを直視する必要があると考えます。
その大きな問題の一つが「カリキュラム・オーバーロード」です。
社会が変化するたびに、学校で教えるべきことが増えてきました。英語、プログラミング、情報教育、主権者教育など、いずれも大切です。しかし、新しい課題が生まれるたびに教育内容を足していけば、学ぶ内容は増え、それを限られた授業時間の中で教えることになり、教員の仕事や負担も増えていきます。
その結果、子どもたちも教員も、時間に追われています。
子どもには、決められた内容をこなすだけではなく、自分で問いを持ち、考え、人と話し、試してみる時間が必要です。失敗したり、寄り道したりすることも、学びの大切な一部です。
教員にも、教材を研究し、授業を工夫し、一人ひとりの子どもと向き合う時間が必要です。
今回示された調整授業時数制度は、限られた時間をどう配分するかという「柔軟化」です。年間の総授業時数そのものを減らすものではありません。
私は、もう一歩踏み込む必要があると考えます。
「何を新しく教えるか」だけではなく、「何を減らすのか」を議論することです。
学習内容を思い切って精選し、標準授業時数そのものについても見直す。その第一歩は、教科間で重複している学習内容を整理することです。さらに、教科のあり方そのものにも踏み込んで見直す必要があります。
そして、そこで生まれた時間を、子どもの主体的、探究的な学びや、教員の教材研究などに充てる。年間授業時数そのものを減らし、「日課にゆとり」を生み出すことを実現すべきです。
AIが瞬時に答えを出す時代だからこそ、人間には、自分で問いを立て、情報を疑い、考え、他者と語り合い、自分で判断する力が一層求められます。
その力を育てるためにも、学校教育に新しいものを足し続けるだけではなく、子どもと教員に「時間の余白」を取り戻す。学校現場に、もっと余裕をつくる。
それが、今回の学習指導要領改訂を考える上で、極めて重要な視点だと考えています。
さあ今日も、ブレずに曲げずに、確実に前進します。
【26年9月15日 その6959『逢坂誠二の徒然日記』8656回】
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