徒然日記
やはり人への投資 【26年8月8日 『逢坂誠二の徒然日記』8618回】
1)やはり人への投資
昨日、日経電子版に掲載された次の記事は衝撃的でした。
(今日の朝刊ではトップ扱いです。)
==以下、引用==
韓国、台湾の1〜6月の輸出額が初めて日本を上回ったことが分かった。人工知能(AI)向け半導体特需を受けて急伸した韓台に対し、日本は半導体関連の素材・製造装置に強みが限られ、恩恵に差が出た。世界が求める最終製品の供給で後手に回る日本のものづくりの現状を映す。
==以上、引用終了==
この記事は、日本の産業政策を考えるうえでかなり重い内容です。
重要なのは、単に「韓国・台湾の輸出額が日本を抜いた」という順位ではなく、AIという新しい巨大市場の成長を、どの国・地域が自国の付加価値として取り込めているかという点です。
2026年上期の輸出額は、日本3844億ドルに対し韓国4963億ドル、台湾4166億ドルです。さらに集積回路では、日本212億ドルに対して韓国1490億ドル、台湾1332億ドル。一方、半導体製造装置では日本150億ドルで、韓国52億ドル、台湾35億ドルを上回っています。
つまり、日本の技術力そのものがなくなったわけではありません。装置や素材など、半導体産業を支える重要な部分では依然として強い。しかし、世界的に需要が急拡大している先端半導体という「最終製品」の市場を十分に取り込めていない。ここが核心です。
さらに気になるのは、「輸出数量指数はリーマン・ショック前をピークに近年横ばい」という点です。輸出数量指数とは、日本から海外へ輸出したモノの実質的な量が増えているのか、減っているのかを見る指標です。その指数が長期間伸びていないということは、日本から世界に売るモノの量そのものが増えていないことを意味します。
これは、円安によってドル換算の輸出額が小さく見えるというだけの問題ではありません。一時的なAI特需を超えた、日本の産業競争力にかかわる構造的な問題として重く受け止める必要があります。
ただし、この記事から直ちに「日本のものづくりは凋落した」と結論づけるのも慎重であるべきです。韓国・台湾は半導体への産業集中度が高く、AI投資の急増が輸出額を大きく押し上げています。また、輸出額だけで国全体の産業競争力を測ることもできません。
むしろ重要なのは、「日本には何がないのか」ではなく、「今も世界で不可欠な日本の技術を、どう次の成長産業につなげるか」です。
半導体製造装置や素材、精密機械、センサー、ロボット、電力技術、医薬品開発など、日本には今なお世界に通用する強みがあります。こうした強みを生かしながら、半導体そのものやAI、ソフトウェア、データセンター、蓄電池、バイオなど、成長する分野へ付加価値の領域を広げていく必要があります。
そのためには、個別企業への支援や研究開発だけでは十分ではありません。人材育成、大学・基礎研究、地域産業、スタートアップ支援までを一体的に捉えた、長期的な産業政策が必要です。
韓国や台湾も、一朝一夕に現在の地位を築いたわけではありません。長期間にわたって人材と資金を重点分野に投入し、民間企業も大きなリスクを取ってきました。日本も「半導体に補助金を出せば追いつける」という程度の話ではありません。
私が最も重く受け止めるのは、「韓国・台湾に抜かれた」こと以上に、日本の輸出数量が長期にわたって伸びていないことです。日本には技術も人材も地域の産業基盤もあります。それなのに、世界の新しい需要を日本の成長に十分結びつけられていない。この原因を直視し、10年、20年先を見据えた産業政策を組み立て直す必要があります。
日本は、ある日突然、競争力を失ったわけではありません。長い時間をかけて少しずつ力を落とし、気がつけば韓国や台湾にも輸出額で追い抜かれる状況になりました。ニセコ町長時代、私は何度か「日本は茹でガエル状態にある」と指摘しましたが、残念ながら、その懸念が現実になったように感じます。
この状況を一気に劇的に改善する方法はないでしょう。だからこそ、将来を見据えた地道な取り組みが必要です。その基本は、やはり「人への投資」です。教育、研究、人材育成、働く人の処遇改善など、人の可能性を最大限に引き出すこと。それを長期にわたって続けることが、日本が再び力を取り戻すための最も確かな道だと考えています。
さあ今日も、ブレずに曲げずに、確実に前進します。
【26年8月8日 その6921『逢坂誠二の徒然日記』8618回】
#逢坂誠二 #歩く歩く聞く聞く
#函館
まず、
「円安によってドル換算の輸出額が小さく見えるというだけの問題ではありません」
とのことですが、日本からの輸出の際の契約・決済通貨の大半は外貨ですので、円安はあまり関係ないはずです。
その日経の記事には私も衝撃を受けました。
ただ、先端半導体の輸出の多くは世界的にも台湾、韓国と中国に集中しており、そこに日本が入れなかったからといって、それ自体は過度に悲観する必要はないと思います。
そして、「世界的に需要が急拡大している先端半導体という「最終製品」の市場を十分に取り込めていない」ことについても、事業には先行者利益と後発者利益があり、先行者に入れなかったからといって、これもあまりネガティブに捉える必要はないと思います。自動車も鉄道も家電も、日本は必ずしも先行者ではありませんでしたし、逢坂さんが度々言及されるドイツも、輸出額自体は大きいものの、先端産業への対応という点では決して速い国ではないと思います。
私が悲観的に捉えているのは、一時は日本がかなり先行していた分野の多くでその後主導権を失い、凋落していることです。
半導体はもちろんですが、パソコン、携帯電話とスマートフォン、SNS、創薬、太陽光発電、洋上風力発電、その他、EVだってもともと日本はかなり進んでいたはずです。
なぜこんなことになったのか?
私はその大きな原因は、企業としても政策としても、重点が既存の利益、既得権を守る方向に置かれてしまったということにあると考えます。その結果として、有望分野への投資や人材移転が阻害され、イノベーションも生まれにくかった。
その背後にあるのが、企業献金だと思います。
現在EVの購入の際には補助金が出ますが、国産メーカーと中国メーカーでは補助金の金額に大きな差があるそうですが、これは企業献金の結果なのではないでしょうか?
この差は国産のEV保護であると同時に、既存のハイブリッド車やエンジン車への保護でもあります。こんな環境が温存されるようでは、他国で中国のEVと勝負することはますます困難になってしまうのではないでしょうか。
だから企業献金廃止は単なる政治改革ではなく、産業政策でもあるはずです。
しかし、旧立憲民主党は企業献金廃止を主張していたものの、これも国民民主党や公明党に擦り寄った結果なのか、中道改革連合は受け皿限定の主張にとどめるようになりました。先の国会では参政党とチームみらいが禁止法案を出しても、彼らと共に禁止を主張することはなかったように思います。
これでは中道改革連合は改革を志向する政党ではないと考えざるを得ませんし、産業競争力向上をどれほど本気で考えているのかも疑わざるを得ません。