徒然日記
10月4日 その3329『逢坂誠二の徒然日記』(5026)
都内は、多少雲があるが晴れ間の広がる朝だ。
今日都内の最高気温は、30度に達するという。
一方、台風18号は沖縄県の久米島付近を北上中。
沖縄本島地方の大雨の特別警報を解除されたが、
引き続き最大級の警戒が必要だという。
今年は、本当に台風の多い年だ。
1)福島第一原発
昨日、毎年実施している
福島第一原発の視察を行った。
東京電力の廃炉汚染水対策の最高責任者である
増田常務執行役員にも対応頂き、
朝10時過ぎから17時近くまでの視察だ。
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今回、印象に残ったのは、
東電が随分と成果を強調したことだ。
Jビレッジに到着した直後に見たビデオにも、
さらに安全性が高まったとか、
環境が良くなったという文言が散りばめられていた。
順風満帆とまでは言わないが、
良い印象を振り付けるそんな雰囲気を感じた。
その姿勢からは、謙虚さが感じられず、
視察の冒頭から、ちょっと嫌な受け止めをした。
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今回の視察のハイライトの一つは凍土遮水壁だ。
完全に凍ってはいないのは、報道のとおりだ。
説明によれば、遮水壁内外の地下水量を調整するため、
あえて凍結させていない部分があるのだという。
しかし凍結状態を示すモニターを見ると、
あえて凍結させていない部分以外にも
凍っていないところがある。
それについては、
雨水の影響だなどとの説明だったが、
さらにそれ以外にも凍結していない部分がある。
結局のところ、
完全凍結状態にできるかどうかは不明のようだ。
さらに遮水壁内外の水位のあり方も手探り状態のようだ。
凍土遮水壁は、不確実性の高い状態となっている。
しかも凍結のために、
一万数千世帯分の電気を使っているという。
今後、これほどの電気を
相当の期間使わざるをえないのが現実だ。
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福島第一原発サイトには、
溢れ出る汚染水を貯めるタンクが林立している。
約3日に一基の割合で千トン級のタンクを作らざるを得ない。
ところがこのタンクを建設する用地が少なくなっている。
東電の説明では、汚染された地下水が今のペースで溢れ出るなら、
タンク建設用地が、あと一年から二年でなくなる見通しらしい。
そのためにも遮水壁がきちんと機能する必要があるが、
現実は心もとない印象だ。
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時間の経過とともに、
原子炉建屋やタービン建屋周辺の
瓦礫類が片付いた印象がある。
しかし真の廃炉作業には、まだ入ることができない。
使用済核燃料プールから燃料を取り出すこともできていない。
つまり廃炉とは言うものの、
その作業開始前の状態にすらたどり着いてはいない。
事故を起こしていない原発の廃炉だって、
相当に困難な作業だ。
ところが核燃料がどうなっているのかも分からない
福島第一原発の廃炉は人類史上初のことであり、
その道行は見えない。
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大雨の際の雨水処理については、
流れ出るのを防ぐことができないのが、
やはり現実のようだ。
その際の放射線量は
少ないかのような話をしていたが、
大量の雨水で希釈されるのだからそれは当然だ。
どんなに希釈されても、
放射性物質が流れ出ていることは事実だ。
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大型の休憩施設や給食施設が
できたことなどを随分と強調していた。
放射線量も下がり、
顔面への全面マスクが不要な地域が増えた。
だから作業環境が向上したと説明を受けた。
確かにそうだと思いたいが、そうなったとしても、
決して作業環境が良いわけではない。
休憩室も食堂も窓がない、
横になって休む場所も見当たらない。
放射線量の管理もどうなっているのか、
説明はどうも切れ味が悪い。
作業環境は確かに向上した部分もあろうが、
決して良い環境とは言えないのが現実だ。
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福島第一原発へ向かうバスの車窓から、
双葉、大熊、富岡などの街並みが見える。
農地は荒れ果て、雑草どころか
木が茂り始めた場所も多い。
あのような田畑を元に戻すのは、簡単ではない。
街も五年前から時間が止まったままのところが多い。
つい先ほどまで接客していた状態のままの
カウンターが残るdocomoショップは、
この五年間何も変わっていない。
時間が完全に止まっている。
こんな店舗や住宅だらけなのだ。
私があの店舗や住宅の関係者だったら、
その人生はどうなっただろう。
そんなことも思うと涙が出る思いだ。
人生の設計図が大幅に狂った方ばかりなのだと思う。
我が身に置き換えてそんな光景を見ていると、
多少の補償では、
箸にも棒にもかからないことが実感できる。
それをどう埋め合わせるのか、真摯な対応が必要だ。
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放射線量の落ち着きなどに伴って、
事故対応の最前線となっていた
Jビレッジの役割が低下している。
これは悪くないことだが、
2018年からJビレッジが
本来のサッカーのトレーニング施設や
競技場として利用されるという。
嬉しいことのように思うが、
福島第一原発の線量のことを考えると、
手放しでは喜べない。
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福島第一原発原発の現状は、事故後5年半が経過し、
随分と整理のついた部分も多い。
しかし、何年先にどうなるのか、
未だにそんなことを見通せる状況ではない。
考えられる限りのあらゆる対応をしなければならないが、
どの程度の費用がかかるのか、それも見えてはいないし、
その負担を誰が行うのかも判然としない。
国会の事故調の報告書も、未公開部分が多く、
十分に活用されているとは言えない状態だ。
そして責任の所在がどこにあるのか、
何が問題だったのか、最も大切なことについて、
最近は語られることも少なくなってきた。
福島第一原発問題の本質を風化させてはならない。
昨夜、福島第一原発から都内に戻ったのは、
午後10時近くになった。
今朝は、疲労感があるが、国会の雲行きが怪しい。
しっかりと対応しなければならない。
さあ今日も、確実に前進します。
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2016.10.4
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